夜中に「ヒョーヒョー…」と不気味な鳴き声が聞こえたら、それはもしかして

「鵺(ぬえ)」の仕業かもしれません。
昔の人々は、そんな不思議な音に耳をすませながら、「これはただの風じゃないぞ…」なんて思ったのでしょう。
鵺は、トラの足、サルの顔、タヌキの体、ヘビのしっぽを持つといわれる、いろんな動物のパーツを集めたような不思議な妖怪です。
なんともおかしな見た目なのに、登場する話はこわ~いものばかり。
でも実は、ただ怖がらせるだけじゃなく、昔の人の「こうやって生きるといいよ」というメッセージもこめられているんです。
この記事では、「鵺って何?」「どこに現れるの?」「本当はどんな意味があるの?」という疑問を、わかりやすく、そして楽しく解き明かしていきます。
妖怪 鵺(ぬえ)とは
特徴
- サルの顔をしているけど、トラの足をもっている
- 体はタヌキ、しっぽはヘビというモンスター級の見た目
- 夜になると「ヒョーヒョー」と不気味な声で鳴く
- 正体が見えないまま、人に不安をあたえる妖怪
- 古い伝説では「天皇の寝込みを襲った」ともいわれている
- 見た人は病気になったり、こわいことが起こると言われた
プロフィール
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 鵺(ぬえ) |
姿 | サルの顔、トラの足、タヌキの体、ヘビのしっぽ |
鳴き声 | ヒョーヒョーと不気味な声 |
性格 | 不気味で人に不安を与える |
登場時代 | 平安時代ごろから |
有名な伝説 | 天皇の寝室に現れた怪異として語られる |
関連人物 | 源頼政(げんのよりまさ)に退治された |
出現場所 | 山や森、特に京都のあたり |
正体 | 正体不明で、「不安のかたまり」のような存在 |
象徴するもの | 恐れ、病気、災い、正体のわからない不安 |
鵺について詳しく

不気味な見た目のミックスモンスター
鵺(ぬえ)は、日本でもトップクラスに不気味で不思議な妖怪です。
その姿は、いろんな動物の特徴をまぜあわせたような、まるで「妖怪の寄せ集め」。
顔はサル、足はトラ、体はタヌキ、しっぽはヘビ。
これを聞いただけで、「えっ、そんなの本当にいるの?」と思ってしまいますよね。
でも、これこそが鵺のこわさ。見た目だけでなく、なによりも「よくわからない」ことが人を不安にさせるのです。
夜に鳴く、正体不明の声
鵺は夜になると、どこからともなく「ヒョーヒョー」という不気味な声で鳴きます。
姿は見えないのに、声だけが聞こえる――そんなところも、人の想像力をかきたてて、ますますこわさが増すのです。
昔の人は「見えないもの」をとてもおそれました。
今でこそライトで部屋が明るい時代ですが、昔の夜は真っ暗。そんななかで、この声が聞こえたら…誰だってゾッとします。
平安時代の有名事件「鵺退治」
この鵺、実はとても有名な事件に登場します。
時は平安時代、ある夜、天皇が病に倒れました。
その原因は、「夜になるとどこからか聞こえてくる不気味な鳴き声」だったといいます。
正体を探ったところ、それが「鵺」だったのです。
このとき立ちあがったのが、源頼政(みなもとのよりまさ)という武士。
彼は弓の名手で、夜の空に矢を放ち、見事に鵺を射抜いたのです。
この話は『平家物語』などでも語られ、今も語り継がれています。
豆知識
- 実は、実在する「トラツグミ」という鳥の鳴き声が鵺の正体ともいわれている
- 源頼政が鵺を退治したあとの体は、京都の鞍馬山のふもとに流されたという
- 鵺の死体を見た人は、しばらく不幸が続いたと伝えられている
- 「鵺的(ぬえてき)」という言葉は、「はっきりしない、あいまいなもの」という意味でも使われている
- 鵺はアニメやゲームにもよく登場し、人気のある妖怪キャラのひとつ
出現する場所
鵺の伝説は、主に京都のあたりで語られています。
特に有名なのが、源頼政が鵺を退治したという「京都御所(きょうとごしょ)」の話。
そして、鵺の死体を流したとされるのが「鴨川(かもがわ)」です。
川の流れにのせて、京都から遠くへ流された鵺の体は、最終的に「兵庫県の芦屋(あしや)」に流れついたとも言われています。
また、鞍馬山(くらまやま)のふもとや、京都市内のいくつかの神社にも、鵺にまつわる碑や言い伝えがのこっています。
今でも、夜に山道を歩いていると、「鵺の声が聞こえるかも…」なんて言われることもあるそうです。
鵺(ぬえ)が教えてくれること

ある日の物語
ある晩、京都のはずれにある小さな村に、一人の旅人がやってきました。
名は藤吉(とうきち)。旅の途中で日が暮れてしまい、村のはずれの山小屋で一晩を明かすことにしたのです。
「こんばんは~、今夜だけ泊めてもらえませんか?」
藤吉が小屋に入ると、そこには誰もいない。
けれど、囲炉裏には炭火がくすぶり、誰かがいたような気配だけが残っています。
しかたなく、藤吉は持っていたむすびを食べながら、ゴロリと横になりました。
そのとき――
「ヒョーヒョー…」
どこからともなく、不気味な鳴き声が聞こえてきました。
「ん? なんだ、今の声…?」
外は真っ暗。風もなく、静かな夜。なのに、あの不気味な声だけが耳に残ります。
藤吉は勇気を出して、小屋の外へと出てみました。すると――
「おい、そこの人間」
突然、声がしました。振り返ると、そこにはサルのような顔、タヌキの体、トラの足、ヘビのしっぽを持った奇妙な姿の生き物が立っていたのです。
「わ、わわっ…お、妖怪か!?」
「おどかすつもりはなかった。ただ、あんたがなにか困っているような気がしてな。
ワシは鵺。昔はこわがられていたが、今はもう静かに暮らしておる」
「え? 鵺って、あの天皇をおどろかせた妖怪じゃないのか?」
「ふふふ、昔はそうだったかもしれんな。でも、人間の不安がワシの力のもと。今の人間たちは…スマホの通知にすらおびえておるようじゃのう」
「た、たしかに…。知らない番号から電話が来るだけでドキドキするなぁ」
「それじゃ、ワシと同じじゃの。見えない正体に、おびえる。だが、それを乗り越えようとする心が、大事なんじゃよ」
藤吉は、鵺と話すうちに、なんだかこわさが消えていくのを感じました。むしろ、少しだけやさしさすら感じたのです。
「ありがとう、鵺さん。なんだか、元気が出たよ」
「よい夢を。明日からまた、前を向いて歩くがよい」
そう言って、鵺はスッと夜の闇にとけこむように消えていきました。
藤吉はもう一度、小屋の中に戻り、ふとんにくるまりながら思いました。
(見えないものをこわがってばかりじゃなく、知ろうとすることが大切なんだな)
夜の静けさの中、今度は不思議と安心できる「ヒョーヒョー…」という声が、優しく響いていました。
伝えたかったこと
見えないものへの恐れと向き合う
鵺の物語には、「人は、見えないものや正体がわからないものをこわがる」という教訓が込められていると考えられます。
昔の人々にとって、「夜」はとてもこわい存在でした。
明かりもなく、音や影だけが頼りの世界。そこに、正体不明の鳴き声が聞こえたら、誰でも恐れてしまいます。
これは現代にも通じる話です。例えば「病気」「災害」「知らない人」「SNSでの中傷」など、正体がはっきりしないものに対して、人はやっぱり不安になります。
でも、正体を知ればこわくないこともたくさんあります。
鵺の話は、「まずは知って、向き合う勇気をもとう」というメッセージにも感じられます。
妖怪は「心の鏡」
鵺の姿が、サルやトラやタヌキやヘビなど、いろんな動物のミックスでできているのもポイントです。これは、「人の心の中にある、いろんな感情のあつまり」をあらわしているのかもしれません。
おこりっぽい気持ち(トラ)、ずるがしこい気持ち(サル)、こそこそ逃げたくなる気持ち(タヌキ)、しつこくねちねちした気持ち(ヘビ)…。
どれも人の中にあるもので、そういう気持ちとどう向き合うかを考えさせられます。
つまり、鵺はただの「こわい妖怪」ではなく、「自分の中の不安や弱さ」をあらわす存在なのかもしれません。
まとめ:鵺(ぬえ)の正体 猿虎狸蛇ハイブリッドの鳴き声が不気味
- 鵺はさまざまな動物を組み合わせた不思議な妖怪
- サルの顔、トラの足、タヌキの体、ヘビのしっぽという姿
- 夜になると「ヒョーヒョー」と鳴く正体不明の存在
- 平安時代に天皇を悩ませ、源頼政に退治されたという伝説がある
- 鵺は「不安」や「正体のわからないこわさ」の象徴
- 実在する鳥「トラツグミ」の鳴き声が鵺の正体かもしれない
- 鵺の伝説は京都や芦屋などに多く伝わっている
- 鵺との会話から「見えないものと向き合う大切さ」がわかる
- 妖怪は人の心の不安や弱さを映す「心の鏡」
- 鵺の物語は現代にも通じるメッセージを伝えている
おわりに
今回紹介した「鵺(ぬえ)」という妖怪は、ただの「こわい存在」ではなく、私たちの心の中にある「見えない不安」や「よくわからないもの」への恐れをあらわす、とても深い意味を持つ存在でした。
サル、トラ、タヌキ、ヘビといういろんな動物の特徴をまぜたその姿は、まるで私たちの心の中のいろんな気持ちのかたまりのようです。
昔の人たちは、そんな鵺をとおして「正体を知ることの大切さ」や「こわくても立ち向かう勇気」を伝えようとしたのかもしれません。
そしてそれは、今の時代にも通じる大切なメッセージです。
SNSでの情報、学校でのうわさ、未来への不安…そんなとき、鵺のことを思い出してみてください。
見えないものにこそ、大切なことがかくれているのかもしれません。
さあ、次に夜の森で「ヒョーヒョー」という声が聞こえてきたら、ちょっとだけ耳をすましてみましょう。
それは、鵺があなたのことを見守ってくれているサインかもしれませんよ。