「雷が鳴ったら、外に出ちゃダメ!」なんて言われたこと、ありませんか?
実はそれ、昔の人たちが“ある恐ろしい妖怪”の仕業だと思っていたからかもしれません。
その妖怪の名前は――

大嶽丸(おおたけまる)
名前だけで強そう!
読み方もちょっとむずかしいけど、名前からして何だか強そうですよね。
じつはこの大嶽丸、山にすむ恐ろしい鬼のような存在で、雷や風をあやつるといわれています。
でも、ただの悪者ではありません。
神さまと戦ったという伝説まで残っていて、まるで映画のボスキャラみたいな存在なんです。
そして、大嶽丸は酒呑童子、玉藻前と並んで『日本三大妖怪』と言われています。
この記事では、そんな「大嶽丸」の正体や、どんなふうに伝えられてきたのか、ちょっぴりこわくてワクワクするようなお話を紹介していきます。
それでは、雷のようにドドーンといってみましょう!
妖怪 大嶽丸(おおたけまる)とは
特徴
- 山にすむ巨大な鬼のような妖怪で、風や雷を自由にあやつる
- 天皇の命を受けた英雄・坂上田村麻呂と激しい戦いをした
- 魔王ともいわれ、刀や鉄の玉を使った不思議な力を持つ
- 奈良県や三重県など、関西の山あいに伝説が多くのこる
- 神と妖怪のあいだにいるような、ただの悪者じゃない存在
- 倒されたあとも「祟り(たたり)」を起こすとおそれられた
プロフィール
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 大嶽丸(おおたけまる) |
種類 | 妖怪・鬼・魔王 |
性格 | 強くて高慢、だけど誇り高い一面も |
特徴 | 雷・風をあやつる、鉄の武器を持つ |
好きな場所 | 大和の大峰山や鈴鹿山脈などの山中 |
有名な伝説 | 坂上田村麻呂との戦い、祟りを起こす存在としても有名 |
主な出現地 | 奈良県、三重県など関西地方の山地 |
大嶽丸(おおたけまる)について詳しく

雷と風をあやつる山の魔王
大嶽丸は日本の古い伝説に登場する、恐ろしいけれど神秘的な存在です。
雷や風をあやつる力を持ち、人々におそれられてきました。
その姿は鬼のようで、鉄の刀や鉄の玉を武器として使い、空を飛んだとも言われています。
まさに「山の魔王」と呼ぶにふさわしい存在です。
嵐や雷が山の上で激しくなると、「大嶽丸が怒っているんだ」と昔の人は考えていました。
英雄との伝説の戦い
大嶽丸の伝説の中でも有名なのが、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)という武将との戦いです。
坂上田村麻呂は、朝廷の命を受けて、東北地方を平定するために派遣された武人。
そんな彼が、途中で立ち寄った山中で、大嶽丸と戦うことになります。
大嶽丸は、風や雷で田村麻呂の軍を苦しめますが、最終的には田村麻呂の力と知恵によって倒されてしまいます。
この戦いの様子は、まるで神話やファンタジー小説のようなスケールです。
倒された後もおそれられる存在
大嶽丸は倒されたあとも、「祟り(たたり)」を起こす存在として人々に恐れられました。
田村麻呂がその魂をなぐさめるために、神社を建てたという話もあります。
実際に、鈴鹿の山々には大嶽丸をまつる神社がいくつかあります。
昔の人たちは、大嶽丸の力を「ただの悪」としてではなく、「おそれつつ、敬う」気持ちでとらえていたのです。
魔王か、神か?
大嶽丸は、単なる妖怪や鬼ではな「魔王」と呼ばれることもある特別な存在です。
天の力に近い風や雷を使いこなし、山に住む神のような存在でもありました。
倒されても、神としてまつられたり、伝説の中で語りつがれたりするのは、その力がただの悪ではなく「自然そのもの」だったからかもしれません。
このように、大嶽丸は「悪い存在」とだけでは言い切れない、とても奥深い妖怪です。
豆知識
- 大嶽丸が使っていた「鉄の玉」は、現代でいう鉄球のような武器だったともいわれている
- 雷をあやつることから、落雷が多い場所では「大嶽丸の怒り」と呼ばれることもあった。
- 鈴鹿の山には、大嶽丸が隠れていた「魔王の岩屋(いわや)」という洞窟がある
- 大嶽丸は倒された後、「神」としてまつられている神社もある
- 大嶽丸の伝説は、能(のう)や歌舞伎の題材にもなったことがある
出現する場所
大嶽丸が出現したとされる場所は、主に関西地方の山の中です。
特に有名なのが「鈴鹿山脈(すずかさんみゃく)」と「大峰山(おおみねさん)」です。
鈴鹿山脈(三重県・滋賀県)
この地域には、大嶽丸がすみかにしていたといわれる「魔王岳(まおうだけ)」があります。
ここでは、昔から雷がよく落ちたり、嵐が強かったりすると「大嶽丸の怒りだ」といわれました。
山の中には「魔王の岩屋(まおうのいわや)」という洞窟があり、大嶽丸がそこで力をたくわえていたという伝説もあります。
大峰山(奈良県)
修行者たちが登る聖なる山としても知られていますが、大昔は「魔がすむ山」としておそれられていました。
ここでは、大嶽丸と戦った坂上田村麻呂の伝説も残っています。
その他の伝説地
大嶽丸の祟りをおそれて建てられたといわれる神社が、三重県や奈良県のあちこちにあります。
その中には、「大嶽丸神社」とか「魔王神社」といった、ちょっとこわい名前の神社もあるんですよ!
大嶽丸が教えてくれること

ある日の物語
鈴鹿山脈の深い森の中。雲が低くたれこめ、雷がゴロゴロと鳴っていました。その山のてっぺんに、どっしりと腰をおろしていたのが――そう、大嶽丸です。
銀色の髪を風になびかせ、鋭い目で谷を見下ろしていました。
「ふん、また人間たちが山に入ってきおったか。よほど命知らずよのう」
そのとき、小さな足音が大嶽丸の耳に届きました。
ガサガサッと音を立てて現れたのは、細身の少年。背中にリュックを背負い、目をキラキラさせて大嶽丸を見上げています。
「やっと会えた!伝説の大嶽丸!」
「……何者だ、小僧」
「ぼくは歴史クラブの“たける”。自由研究であなたのこと調べてて、本当にいるかどうか確かめにきたんだ!」
大嶽丸は目を細めてたけるを見つめました。恐れず近づいてくる人間など、もう何百年も見たことがありません。
「ふむ……命が惜しくないと見える。よかろう、話くらいは聞いてやる」
たけるは夢中で、大嶽丸に質問を投げかけました。
「どうして雷をあやつれるの? 坂上田村麻呂に本当に負けたの? いまも怒ってるの?」
大嶽丸はゴロゴロと雷の音を鳴らしながら笑いました。
「我は自然の力を借りし者。雷も風も、山の声にすぎぬ。そして田村麻呂……あやつは強かった。だが、我を完全には消せなかった。こうして今も、山に残っているのだ」
たけるは少し怖くなったけれど、大嶽丸の目の奥に何かあたたかい光を見ました。
「大嶽丸、ぼく、あなたのこと悪者だと思ってた。でも、ちょっとだけわかった気がする。あなたは山や自然の力を守ってたんだね」
大嶽丸はしばし黙り、そしてこう言いました。
「自然をおそれ、敬う心。それが失われたとき、人は大きな災いに見舞われる。……忘れるなよ、小僧」
その瞬間、雷鳴が山を揺らし、まばゆい光があたりを包みました。たけるが目を開けると、そこに大嶽丸の姿はもうありませんでした。
たけるは静かな山を見上げて、にっこりと笑いました。
「ありがとう、大嶽丸。ぼく、ちゃんと伝えるよ」
――それから、たけるの自由研究は学校中で大評判になったとか、ならなかったとか(笑)
伝えたかったこと
昔の人が「自然の力」を恐れた理由
大嶽丸のような妖怪が語りつがれてきた背景には、昔の人たちが「自然のこわさ」を強く感じていたことがあると思います。
雷が鳴ったり、嵐が吹いたりすると、今なら気象のしくみで説明できます。
でも昔の人たちにとって、それは「神さまや妖怪が怒っている」と感じるような大事件でした。
だから、雷や嵐をあやつる大嶽丸という妖怪は、「自然に逆らえば痛い目にあうよ」という教えとして生まれたのかもしれません。
雷にうたれないように、風にとばされないように、人は「自然をおそれて、気をつけて暮らす」ことを学んできたのです。
妖怪は「悪」ではなく「教え」だった
大嶽丸は、たしかに人間にとってこわい存在です。
でも、その力をよく見ると、ただの悪者ではありません。
自然の力そのものであり、山の神に近い存在。
つまり、妖怪というのは「悪いもの」ではなく、「人がどう生きるべきか」を教えるためのキャラクターでもあったのです。
たとえば、山の中に入るときには気をつけなさい。
大自然の力を軽く見ると、しっぺ返しがくるよ――そんなメッセージが、大嶽丸にはこめられているように思えます。
まとめ:大嶽丸(おおたけまる)の正体は神か魔か?坂上田村麻呂に討たれてもなお
- 大嶽丸は雷や風をあやつる山の魔王のような妖怪!
- 奈良県や三重県などの山に伝説が多く残る。
- 英雄・坂上田村麻呂と戦ったという壮大な伝説あり!
- 倒された後も「祟り」があるとおそれられていた。
- 神社にまつられていることもある不思議な存在。
- 魔王なのに、自然の力をあらわす神のような存在でもある。
- 大嶽丸は「自然を敬う心」を人々に伝えていた!
- 山に入るときの注意や自然災害への警戒の教訓をふくんでいる。
- 現代でも通じる「自然と人との関係」がテーマ!
- こわいけどかっこいい、奥が深い妖怪!
おわりに
今回ご紹介した「大嶽丸」は、ただのこわい妖怪ではありませんでした。
雷や風をあやつり、神のような力を持ちながらも、人間の暮らしと深く関わってきた存在です。
坂上田村麻呂との戦いや、山にまつられている神社の話などを通して、大嶽丸は「自然の力をあなどるな」というメッセージを、今に伝えているように思えました。
昔の人たちは、自然に対する敬意や恐れを、妖怪というかたちにして子どもたちに伝えました。
それは、今を生きる私たちにも必要な教えかもしれません。
この記事を読んでくれたあなたも、これから山や自然にふれるとき、「大嶽丸が見てるかも?」とちょっぴり思い出してくれたらうれしいです。
こわいけどどこか神秘的で、ちょっとかっこいい――そんな大嶽丸に、少しでも興味を持ってもらえましたか?