「え?ネコが妖怪になるの?」と思ったあなた、大正解です!
今日ご紹介するのは、ふわふわの毛並みに、かわいらしい顔……
かと思えば、しっぽが二本に分かれていて、なんだか恐ろしい力を持っている。

不思議な妖怪
猫又(ねこまた)です
昔から日本では、動物が年をとると不思議な力を持つようになると言われてきました。
とくにネコは、家の中でも自由気ままに動き回り、人間のことをどこか見下しているような、そんなところがありますよね?
そのミステリアスな雰囲気が、猫又という妖怪のイメージを作ったのかもしれません。
この記事では、猫又の特徴やひみつ、出没する場所、昔の人が猫又にどんな思いを抱いていたのかを、まるごと紹介します。
さらに、猫又が出てくるちょっとしたストーリーもご用意していますので、最後まで読んでみてくださいね!
妖怪 猫又(ねこまた)とは
特徴
- 年をとったネコが変身する妖怪
- しっぽが二つに分かれている
- 人間の言葉をしゃべることがある
- 火をあやつったり、不思議な力を持っている
- ときには人間にイタズラしたり、助けてくれることも
- 山に住む野生の猫又もいれば、町にすむ家ネコタイプもいる
プロフィール
名前 | 猫又(ねこまた) |
---|---|
種類 | 妖怪 |
起源 | 日本の民間伝承 |
特徴 | しっぽが二本、人語を話すことも |
能力 | 火を使う、変身、霊を呼ぶなど |
出没場所 | 山奥や古い町家、田舎の村など |
性格 | 気まぐれで、少しいたずら好き |
猫又について詳しく

猫又ってどんな妖怪?
猫又(ねこまた)は、日本の昔話や伝説に登場する妖怪です。
もともとはふつうのネコが年をとって妖怪になったものとされ、見た目はふつうのネコと変わりませんが、大きな特徴はしっぽが二つに分かれていること。
座っているときには目立たなくても、ふわりと立ち上がるとその異変に気づき、ゾクッとする人も多かったようです。
長生きしたネコが変化する
昔の人たちは「ネコは年をとると妖怪になる」と信じていました。
特に、長生きしたり、頭のよいネコは特別な存在とされ、猫又になると噂されました。
だいたい10〜20年以上生きたネコが猫又になるといわれており、当時の環境ではそれだけでも珍しかったのです。
火をあやつる!?猫又の力
猫又が持つ力の一つに「火をあやつる能力」があります。
夜になると青白い火をともして現れたり、家の中で突然火がついたりすると猫又の仕業だと恐れられました。
また、人間の言葉を話すこともあるとされ、夜中にぼそぼそと聞こえるネコの鳴き声が、人間の言葉のように感じられるという怪談も残っています。
霊とつながる?猫又の不思議な力
猫又は、霊を呼び寄せる力を持っているとも考えられてきました。
人が亡くなったあと、ネコの様子が急に変わったり、不思議な行動をとったりすると、「猫又が霊を呼んでいるのでは?」といった話が語られました。
特に家族の死とネコの行動が結びついたときに、猫又の存在が意識されたようです。
猫又には2つのタイプがいる
猫又は、大きく分けて2種類のタイプがいるとされています。
- 山に住む猫又:野生のネコが長く生きて妖怪になったタイプ。すばしっこくて人前にはあまり姿を見せません。
- 家に住む猫又:人と暮らしていたネコが猫又になったタイプ。人間のそばにいることが多く、生活をのぞいたり会話を聞いているとも言われます。
江戸時代にも人気!猫又絵巻
江戸時代には「猫又絵巻(ねこまたえまき)」という絵巻物が作られました。
そこには、人のように踊ったり、お祭りを楽しんだりする猫又たちの姿が描かれています。
その表現からは、猫又がただの恐ろしい妖怪ではなく、どこか愛嬌のある存在として親しまれていたことがわかります。
豆知識
- 猫又は「しっぽが二本に分かれている」のが定番ですが、昔の絵では三本やもっと多く描かれることもあります。
- 江戸時代には「ネコを長生きさせてはいけない」と書かれた文書もありました。猫又を恐れていた証拠です。
- 落語や歌舞伎にも、猫又が登場する演目があります。
- 「猫又」という名前は「根古股(ねこまた)」という地名が語源という説もあります。
出現する場所
猫又は、日本全国で伝説があります。
- 長野県の山あいの村:ここでは、夜になるとしっぽが二本あるネコが歩いていた、という目撃談があります。
- 京都の古い町家:江戸時代からの家に住みついていたネコが猫又になったという話があります。
- 広島県の山間部:山に住んでいる野生の猫又が、時折人里におりてくるといわれています。
古い家や、静かな山のふもとにある村など、時がゆっくり流れているような場所で、猫又はよく見られるようです。
猫又が教えてくれること

ある日の物語
月がふわりと光る夜。田舎の小さな村のはずれにある、古びたお屋敷。
そこに住むのは、ひとりぼっちの男の子・ユウタ。
両親は仕事で町に出ていて、今日はおばあちゃんとお留守番だ。
「ユウタ、ネコのミケは見なかったかい?」
おばあちゃんが聞く。ユウタは首をかしげた。
「昼間まではいたよ。でも…夜になってから見てないな。」
そのときだった。縁側のガラス戸の外に、ふしぎな影がぴょんと現れた。
ユウタがそっと近づいて見ると、それは――ミケだった。けれど、どこか様子がちがう。
しっぽが…二本に分かれている? それに、目がいつもよりキラリと光ってる!
「ミケ…?」
すると、ミケが口を開いた。
「おまえ、見たな。」
ミケがしゃべった!?ユウタはあわてて後ずさり。「ね、ネコがしゃべった!」
ミケ――いや、猫又になったミケは、スッと座り直して語り始めた。
「わしは、この家に仕える猫又じゃ。おまえのひいばあちゃんが可愛がってくれた。その恩があるゆえ、この家を守っておる。」
「ミケ…なんでしゃべれるの?なんでしっぽが二本なの?」
「ネコというのは、長く生きると知恵がつくのじゃ。人間の言葉も、火を使う術もな。しっぽが二つに分かれるのは、力を得た証。」
「すごい…」ユウタは目を見開いた。「じゃあ、ミケはずっとここにいてくれるの?」
猫又ミケは、ふっと目を細めた。
「ああ。だが、そろそろ次の世代に知恵を渡すころかもしれぬ。ユウタ、おまえ…人間の子でも、わしの話を聞けるのなら、特別じゃぞ。」
その夜から、ユウタと猫又ミケのふしぎな時間が始まった。
ミケはユウタに、火の灯し方や、月の下で踊る術、そして昔の村にあった怖い話などを教えてくれた。
ある日、ユウタがふと聞いた。
「ねぇ、猫又って、こわい存在だと思ってた。でもミケは違うよね?」
ミケは少しだけ寂しそうに笑った。
「わしら猫又も、もとは普通のネコよ。ただ、人が恐れることで、恐ろしい存在とされた。けれど、人を守ることも、できるのじゃ。」
その夜、遠くの森で山火事が起きた。風にあおられて火が村へ迫る。
ユウタがあわてて外に出ると、ミケが立っていた。二本のしっぽが風に揺れ、目が赤く光る。
「ユウタ、家の中におれ。わしが火をくい止めよう。」
そしてミケは、青い火をまとって森へと消えた。
翌朝、村の人たちが見たのは、森の手前でくい止められた火の跡。そして、ススで黒くなったミケが、ユウタの家の縁側で寝ている姿だった。
それからというもの、村では「火を止めたネコの話」が語りつがれるようになった。
ユウタは大人になっても、あの夜のことを忘れなかった。そして、自分の子どもにもこう言って聞かせるのだ。
「ネコはね、ただのペットじゃない。時には、命をかけて守ってくれる…猫又かもしれないよ。」
伝えたいこと
「妖怪なんていない」と思う人がほとんどでしょう。でも、猫又の話にこめられたメッセージは、今でも通じるものばかりです。
・命を大切にすること
・見かけだけにだまされないこと
・自然や動物を尊重すること
・火や道具に対して慎重になること
・ちょうどよい距離感を大切にすること
猫又は、昔の人が“目に見えないものの大切さ”を伝えるために生んだ知恵のかたまりなのです。
まとめ:【妖怪】しっぽが二つの猫又(ねこまた)って?不思議な力と何をする妖怪なのか解説
- 猫又は長生きしたネコが変身する妖怪。
- 最大の特徴は、しっぽが二本に分かれていること。
- 火をあやつったり、人の言葉をしゃべる力を持っている。
- 山に住む野生型と家ネコ型の2種類が存在。
- いたずら好きだが、人間を助けることもある。
- 江戸時代には猫又の絵巻が作られるほど人気だった。
- 各地に猫又の伝説があり、特に長野・京都・広島で多く見られる。
- 猫又は、命や自然、動物に対する敬意を伝える存在。
- 物語を通して、猫又のやさしさとこわさのバランスが描かれた。
- 現代でも、猫又から学べることはたくさんある。
おわりに
猫又(ねこまた)は、長生きしたネコが変身する、ちょっぴりこわくて、どこかかわいい妖怪です。
しっぽが二本に分かれているその姿は、人々に不思議なイメージを与え、昔から多くの物語や伝説に登場してきました。
火をあやつったり、人間の言葉を話したり、時にはいたずらをしたり。
でも実は、人間を守ったり助けたりすることもある猫又は、単なる「こわい妖怪」ではなく、やさしさや知恵も持った存在です。
昔の人たちは、猫又の話を通して、「命を大切にすること」や「動物を敬う心」、「火のこわさや大切さ」、「見かけではなく中身を見る目」など、大切なことを伝えようとしていたのかもしれません。
猫又のことを知れば知るほど、「ネコってただのペットじゃないのかも」と思えてきますよね。
あなたの家のネコも、もしかしたら…? そんなふうに想像してみるのも、妖怪の楽しさのひとつです。