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【妖怪】泥田坊(どろたぼう)田をかえせ~泥の中から現れる悲哀の呻き

山林

夜、しずまり返った田んぼから「田をかえせえぇぇ…」といううめき声が聞こえてきた。。

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そこには泥田坊がいるかも!

泥まみれで顔だけが田んぼから出てくるこの妖怪、見た目も声もなかなかのインパクトです。

でも、なぜ泥田坊はそんなことを叫んでいるのでしょう?

そして、なぜ夜の田んぼにあらわれるのでしょうか?

実は泥田坊には、田んぼを大切にしていた農民たちの悲しい思いがこもっているんです。

 

この記事では、泥田坊の特徴や伝説、どこにあらわれるのか、そしてとある日の物語まで、ぜんぶまとめてご紹介します。

読むと、田んぼを歩くときの見方がちょっと変わるかもしれませんよ。


妖怪 泥田坊(どろたぼう)とは

特徴

  • 泥田からぬっと出てくるという不気味な姿
  • 全身泥まみれで、手足がないこともある
  • 夜になると田んぼからうめくような声で「田をかえせ…」と
  • 怒りや悲しみの感情がこもっていて、人間に復讐しようとすることも
  • もともとは真面目な農民だったという説もある
  • 出現するとその田んぼの作物が育たなくなるという言い伝えも

プロフィール

項目内容
名前泥田坊(どろたぼう)
種類妖怪(田んぼに出る霊のような存在)
出現場所主に田んぼ、特に夜間に出る
特徴泥にまみれた顔、うめき声、足がない
性格恨みを抱いている、さびしがり屋という説も
有名な伝説地域滋賀県、奈良県、関西地方全般

泥田坊について詳しく

泥田坊って、いったい何者?

泥田坊は、田んぼにしずんだ妖怪です。泥の中からぬっと出てくる。

目はにごり、口は泥でふさがれたようにゆがんでいます。

そして夜になると、「田をかえせぇぇ……」といううめき声が、しずかな田んぼにひびくのです。

 

実はこの泥田坊、もともとは人間だったといわれています。

ある農民が、自分の田んぼをとても大事にして生きていました。

でも、年をとって働けなくなり、田んぼを息子にゆずりました。

ところが息子はその田んぼを売ってしまったのです。

それを知った農民は、悲しみのあまり亡くなり、死後に妖怪となって田んぼにとどまりつづけた――それが泥田坊の始まりなのです。

農業と妖怪の関係

昔の日本では、田んぼは家族の命をつなぐ大切なもの。

天気や虫、病気など、さまざまなものから田を守らなければなりませんでした。

だからこそ、田んぼには神さまがいると考えたり、妖怪が出るという話が生まれたりしたのです。

泥田坊は、田んぼをおろそかにするとどうなるか、を伝える存在ともいえます。

泥田坊に出会ったら?

もし夜の田んぼで、「田をかえせぇぇ……」という声を聞いてしまったら?

走って逃げるのもアリですが、もしかしたら泥田坊はあなたに「田んぼを大切にしてね」と伝えたいだけかもしれません。

静かに手を合わせて「ありがとう」と言ってみると、もしかしたら泥田坊は消えてくれるかもしれませんね。


豆知識

  • 泥田坊は、稲の生育が悪い年に出やすいといわれています。
  • 田植えの時期に子どもが田んぼでふざけていると、泥田坊に引きずりこまれるという話も。
  • 江戸時代の妖怪絵巻にも描かれており、けっこう昔から知られている存在です。
  • 泥田坊は足がないことが多く、まるで地面にとけこんでいるように見えます。
  • 地域によっては、泥田坊を「田の神が怒った姿」とするところもあります。

出現する場所

泥田坊がよく出るとされているのは、関西地方の田園地帯。

特に滋賀県や奈良県の古い村では、昔から「田んぼには妖怪が出るから夜に行くな」と言い伝えられてきました。

 

また、秋の収穫が終わった後や、田んぼが荒れてしまった場所で出るともいわれています。

大切にされなくなった田んぼには、泥田坊のような妖怪があらわれる……

というのは、人間の心の中にある「うしろめたさ」が形になったのかもしれませんね。

泥田坊が教えてくれること

ある日の物語

田んぼの近くにある小さな村。そこに住む少年・タクマは、スマホゲームばかりしている今どきの子。ある夏の夜、タクマは家の手伝いで、田んぼに忘れたじょうろを取りに行くことになりました。

「めんどくさー……。夜の田んぼって気味悪いんだよな。」

そう言いながら田んぼに向かったタクマ。すると、田んぼの真ん中から、何かがぬっと顔を出しました。泥だらけの顔、その目はどこか悲しそう。ゆがんだ口から、しわがれた声が出ました。

「……田を……かえせ……」

「うわっ! な、なんだよあれ! 妖怪!?」とタクマは驚き、足がすくんで動けません。

「ここは、わしの……大事な田……。それを……忘れたのか……」

泥田坊がじりじりと近づいてきます。

「ま、待ってくれよ! 僕、何も悪いことしてないって!」

タクマがふるえながら言うと、泥田坊はじっと彼を見つめました。

「……おぬしは、田の大切さを……知っておるか?」

「え? 田の大切さ?」

「この田んぼは、家族の命をつないできた場所……。わしは、それを守っていた……。それなのに、誰も見向きもしなくなった……。」

泥田坊の声は、だんだんと小さく、悲しみに満ちたものになっていきました。

「僕……知らなかったよ。でも、ばあちゃんがいつも言ってた。『田んぼは命』って。ぼく、明日ちゃんと田の手伝いするよ。水の見回りもする。だから……もう泣かないで。」

タクマの言葉に、泥田坊はふっと表情をやわらげました。

「……ありがとう……」

そう言って、泥田坊はすーっと泥の中へ消えていきました。

次の日から、タクマは毎朝、田んぼの見回りをはじめました。すると不思議なことに、田の稲はぐんぐん元気になり、村のおじいちゃんたちも驚いていました。

「あの晩のことは夢だったのかな……」

そうつぶやいたタクマは、泥田の中から小さな草の芽が出ているのを見つけて、にっこり笑いました。

伝えたかったこと

昔の人が泥田坊を作った理由

泥田坊のような妖怪が生まれたのには、ちゃんと理由があります。

それは、「田んぼを大切にしてほしい」という願いです。

昔の日本では、米は生きるための一番大切な食べ物でした。

だから田んぼは、命をつなぐ場所。そこをないがしろにすることは、とても大きな罪だと考えられていたのです。

田んぼを売ってしまったり、ほったらかしにしたりすると、泥田坊が出てくる……。

そんな話をすることで、田を守る大切さを子どもや村の人たちに伝えていたのだと思います。

今でも通じる教え

現代では、田んぼの数もどんどん減ってきています。

農業に関心を持つ人も少なくなっている中で、泥田坊の話はとても大事です。

環境を大事にすること、食べ物をムダにしないこと、親や家族の思いをちゃんと受けとめること。

こうした教えは、今の時代にもぴったりと通じるのです。

まとめ:泥田坊(どろたぼう)田をかえせ~泥の中から現れる悲哀の呻き

  • 泥田坊は田んぼにあらわれる妖怪で、泥から出てくる姿
  • 「田をかえせぇぇ…」という声を夜に発する
  • 元は田んぼを大事にしていた農民の霊という説がある
  • 田んぼが荒らされたり売られたりしたことで妖怪になった
  • 泥田坊が出ると作物が育たないという言い伝えがある
  • 滋賀県や奈良県など関西地方に多くの伝説がある
  • 子どもが田んぼでふざけると引きずりこまれるという話もある
  • 「田んぼを大切に」という教えを伝える存在でもある
  • 現代でも、環境や食べ物を大切にする心を思い出させてくれる
  • 妖怪の話は、昔の人の知恵と願いがつまっている

おわりに

泥田坊は、ただのこわい妖怪ではありません。

そのうめき声の裏には、田んぼを守り続けた農民の悲しみや、命をつなぐ食べ物の大切さがこめられています。

顔がぬっと出てくる姿にはびっくりしますが、それは「忘れられた田んぼの声」をかたちにしたものかもしれません。

 

食べ物をムダにしないこと、自然をたいせつにすること、人の思いを受けとめること――妖怪を知ることは、そうした心を育てることにもつながるのです。

これから田んぼを見かけたら、ふと泥田坊のことを思い出してみてください。

そこには、昔の人たちの「願い」が、今も生きているかもしれません。