「鬼ヶ島ってほんとにあったの?」なんて聞かれたら、「うーん、もしかしたらね!」と答えたくなるのが・・

今回の主役「温羅(うら/おんら」です
実はこの温羅、あの有名な『桃太郎』のお話のモデルになったともいわれる、とても有名な妖怪なんです。
でも、ただの「悪い鬼」だと思ったら大間違い!
よーく話を聞くと、「えっ? 温羅って実はヒーローじゃないの?」と思ってしまうかもしれません。
今回はそんなミステリアスでちょっと切ない、でもどこか憎めない温羅について紹介していきます。
伝説の裏に隠された真実や、温羅の意外な一面、そしてちょっと感動してしまうストーリーまで、盛りだくさんでお届けします!
妖怪 温羅(うら)とは
特徴
- 赤鬼のような姿で、角があり、大きな体をしている
- 百済(くだら)から渡ってきた渡来人ともいわれる
- 鉄を自由にあやつり、武器や道具を作る名人
- 吉備の国(現在の岡山県)で城を作り、民とともに暮らしていた
- 吉備津彦命(きびつひこのみこと)に討たれたとされる
- 実は民から慕われていたという伝説もある
プロフィール
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 温羅(うら) |
別名 | 鬼、鬼神、温羅鬼など |
出身地 | 百済(朝鮮半島)から来たとされる |
活動場所 | 吉備の国(岡山県) |
特技 | 鉄を扱う技術、築城、武器づくり |
天敵 | 吉備津彦命 |
見た目 | 大柄で赤ら顔、角のある鬼のような姿 |
「温羅」について詳しく

温羅とは、どんな妖怪?
温羅(うら)は、岡山県に伝わる伝説の妖怪で、その姿は「鬼」として語られることが多いです。
でも、ただの人を怖がらせる鬼ではありません。
鉄を作ったり、道具を作ったり、なんとお城まで建てたという、かなりの技術者だったともいわれています。まるで昔のエンジニアです。
彼が住んでいたのは吉備の国、今の岡山県です。
そこに突然現れた温羅は、大きな体と怪力であたりを圧倒し、鬼ノ城(きのじょう)という立派な城を築きました。
百済から来た? 渡来人説
実は温羅には「妖怪ではなく、外国から来た人だったのでは?」という説があります。
朝鮮半島の百済から船でやってきて、日本に住みついたのだと伝えられています。
当時の日本にはなかった高度な鉄の技術や文化を持っていたため、人々から「得体の知れない存在=鬼」として恐れられたのかもしれません。
そう考えると、温羅はただの「悪者」ではなく、新しい文化を伝えに来た「外国の人」だったのかもしれませんね。
吉備津彦命との戦い
そんな温羅を「悪い鬼」として退治に来たのが、吉備津彦命(きびつひこのみこと)という英雄です。
彼は天皇の命令を受け、温羅の住む鬼ノ城へと向かいました。
温羅と吉備津彦命の戦いは激しく、なんと三日三晩も続いたといいます。
最後は吉備津彦命の矢が命中し、温羅は倒れました。
温羅の首は斬られたあとも叫び続け、あたりにこだましたそうです。
温羅のうらがわ(裏側)
でも、ここが面白いところなんです。
「温羅は本当に悪者だったの?」という疑問がいろいろなところで語られています。
ある言い伝えでは、温羅は村人に鉄の道具や技術を教えていた優しい存在だったとも言われています。
それなのに、異国から来たことで恐れられ、「鬼」とされてしまったのかもしれません。
つまり、悪者とされてしまったのは「見た目」や「違う文化を持っていたこと」が原因だったのかも…。
今でいうと、外国から来た人をよく知らずに怖がってしまうようなことと、少し似ている気がしますね。
温羅の「声」が残った?
温羅の首が斬られたあと、吉備津神社(きびつじんじゃ)では、不思議な「釜の音」が鳴るようになったといいます。
これは「鳴釜神事(なるかましんじ)」と呼ばれ、今でも行われています。
お釜の音で吉凶を占う儀式なのですが、「温羅のうめき声」が釜の音になった、という伝説が残っているんです。
温羅の魂は今もその地に残っていて、何かを語りかけているのかもしれませんね。
豆知識
- 「温羅(うら)」という名前は、「裏(うら)」や「怨(うら)」ともつながっていると言われ、何かを隠された存在を意味しているとも考えられます。
- 吉備津神社の「鳴釜神事」で鳴るお釜の音は、実際に体験することができ、「温羅の声が聞こえる」と今も信じられています。
- 鬼ノ城には実際に古代の城跡があり、歴史的価値がとても高い場所として知られています。
- 温羅は桃太郎の鬼のモデルとされていて、実は「桃太郎=征服者」「鬼=現地の王」という見方もあります。
- 岡山では「温羅は悪くない!」という考え方の人も多く、地域によって伝わり方がちがうのも面白いポイントです。
出現する場所
温羅が登場する伝説の舞台は、現在の岡山県です。
とくに有名なのが「鬼ノ城(きのじょう)」と呼ばれる場所で、実際に山の上に古代の城跡が残っています。ここが、温羅が住んでいたとされる場所です。
また、「吉備津神社」や「吉備津彦神社」も、温羅と関係の深い場所として知られています。
吉備津神社では、今でも「鳴釜神事」が行われ、訪れた人たちが不思議な音を体験しています。
岡山市や総社市では、温羅にまつわる地名や伝説がたくさん残っていて、温羅が「悪い鬼」ではなく「地域の守り神」として親しまれていることもあるんですよ。
「温羅」が教えてくれること

ある日の物語
「温羅と少年ユウトの出会い」
ある日の夕暮れ、吉備の山のふもとに、ユウトという名の好奇心旺盛な少年がいました。
歴史が大好きで、鬼ノ城に住んでいたという「温羅」の話に夢中な彼は、ついに一人で山を登り始めました。
「ほんとに鬼なんていたのかな?」「もし会えたら、どんな話をしてくれるんだろう…」
山を登るにつれ、空は赤く染まり、あたりはしんと静まり返っていきます。そして、城跡の石垣の前に立ったそのとき――。
「…よう、坊主。こんなところで何をしておる?」
背中越しに、どこか懐かしくも重たい声が響きました。
驚いて振り返ると、そこには真っ赤な顔、どっしりとした体、そして一本の角を持つ大男が立っていました。
「あなた…温羅!? 本物の温羅なの!?」
「そう名乗ったこともあるな。でも、お前が思っているような『悪い鬼』ではないぞ?」
「語られる真実」
温羅は石に腰かけ、ゆっくりと語り始めました。
「わしはな、はるか昔、海の向こうからやってきた。わしらの国は滅びかけていてな、この地なら人々を救えると思ったのだ。だから、鉄を作り、道を整え、皆で城を築いた。」
ユウトは目を輝かせて聞き入っていました。
「でも…どうして、退治されちゃったの?」
「違う者を恐れるのは、人の常よ。わしが鬼と呼ばれたのも、知らぬ文化、見慣れぬ姿を持っていたからだ。」
「じゃあ、あなたは…悪いことなんてしてなかったの?」
「少なくとも、わしの心にやましいことはなかったよ。」
温羅の目はどこか遠くを見つめていて、それがとても切なく見えました。
「未来への願い」
「坊主よ。お前のように、真実を知ろうとする者がいれば、いつか誤解はとける。過去の出来事も、違う形で語られるようになるかもしれん。」
「うん、僕、温羅さんの話をみんなに伝えるよ。悪い鬼なんかじゃなかったって。」
温羅はにっこりと笑いました。
「それでいい。わしは、もう寂しくない。」
夕日が沈む頃、温羅の姿はふわりと消えていきました。
残されたユウトは、胸いっぱいの思いを抱きながら、山を下りました。
そして彼は、大人になってから、温羅についての本を書いたのです。「もう一人の桃太郎の物語」として、語り継がれるように。
伝えたかったこと
違いを恐れず、理解しようという心
昔の人たちは、「温羅」のような存在を通じて、ある大切な教えを残しました。
それは、「見た目や文化が違うからといって、すぐに敵と決めつけてはいけない」ということです。
温羅は、外から来た存在で、知らない技術や風習を持っていました。
そのため、人々は恐れて「鬼」と呼び、退治しようとしました。でも、実は温羅は人々を助けようとしていたのかもしれません。
この話は、「違うもの=悪い」と決めつけてしまうと、本当の優しさや知恵を見逃してしまう、という教訓を教えてくれます。
昔の人たちは、温羅の物語を通して、「相手のことをよく知ること」「お互いを理解しようとする心」の大切さを伝えたかったのではないでしょうか。
まとめ:温羅(うら)は悪い鬼だったのか?百済から来た“いい人”説
- 温羅は、岡山県に伝わる「鬼」のような存在である
- 彼は実は鉄を作る技術を持った渡来人だった可能性がある
- 吉備の国に鬼ノ城を築き、人々と共に暮らしていた
- 吉備津彦命に退治されたが、実は悪者ではなかったという説もある
- 斬られた首の声が吉備津神社の鳴釜神事に伝わっている
- 桃太郎の鬼のモデルともいわれている
- 岡山では今でも温羅伝説が多く残っている
- 鬼ノ城は実在する史跡で、訪れることができる
- 違う文化や見た目を持つ者への恐れが物語の背景にある
- 「温羅」は誤解された存在として、理解と共存の大切さを伝えている
おわりに
温羅はただの「悪い鬼」ではなく、時代や文化のちがいから誤解されてしまった、ちょっと悲しいけれど立派な人物でもあったのです。
彼の物語からは、私たちがふだん気づかない「相手を知ろうとする気持ちの大切さ」を教えられます。
もし誰かが自分とちがうことをしていても、それには理由があるかもしれません。
温羅のように、その人の背景を知ることで、きっと新しい発見や理解が生まれるはずです。
温羅の物語は、今の時代にも通じるメッセージをたくさん含んでいます。歴史や妖怪の話を通じて、昔の人たちが何を大切にしようとしていたのかを考えるきっかけになればうれしいです。
ぜひ、この記事を読んで、「温羅」のことをもっと好きになってください。
そして、機会があれば、鬼ノ城や吉備津神社を訪ねてみてくださいね。