あなたは夜道を歩いていて、だれもいないはずなのに、うしろから足音がついてくる…
なんて経験はありませんか?

そこにべとべとさんがいるかも!
見えないけれど、たしかにそこにいる。
不気味だけど、ちょっとユーモラス。そんな不思議な存在が「べとべとさん」なんです。
この記事では、べとべとさんの特徴やプロフィール、どんな場所に出るのか、そして、ある日のできごとを物語として紹介します。
「なぜ昔の人がこの妖怪を語り伝えたのか」も考えてみますよ。
怖いだけじゃない、ちょっと笑えてちょっと考えさせられる、そんな妖怪の世界を一緒にのぞいてみましょう。
妖怪 べとべとさんとは
特徴
- 姿が見えないけれど、足音だけが聞こえる!
- 夜道で後ろからついてくるけど、追いかけてはこない。
- 「べとべとさん、お先にどうぞ」と言うと、足音が止まる。
- 子どもにも出会うことがあるが、特に悪さはしない。
- 関西地方を中心に伝えられている妖怪。
- 見えないけれど、人間に気づいてほしいらしい?
プロフィール
- 名前:べとべとさん
- 特徴:足音だけで存在を感じさせる
- 性格:少しおちゃめで無害
- よく出る場所:暗い夜道、とくに一人で歩いている時
「べとべとさん」について詳しく

見えないけど感じる存在
べとべとさんは、夜の道を一人で歩いている時に後ろから「ぺた…ぺた…」という足音を立てながらついてくる妖怪です。
ふり向いても誰もいないのに、足音だけが聞こえるというのが最大の特徴です。
なんとも不気味ですが、実はこのべとべとさん、人間に直接危害を加えることはありません。
ただ、「べとべとさん」は、なにかを伝えたいのか、こちらに気づいてもらいたいのか、足音をたててついてくるのです。
ことばで追い払える不思議な存在
この妖怪のおもしろいところは、「べとべとさん、お先にどうぞ」と声をかけると、ぴたりと足音が止まることです。
すると、なぜか足が軽くなったような感じになり、不安も消えていくといわれています。
まるで「礼儀正しくお願いすれば、ちゃんと引き下がってくれる」そんな妖怪なのです。
なんだか律儀ですよね。
子どもにも現れることがある?
面白いのは、子どもが一人で夜に外に出たときにも、べとべとさんが現れるという話もあります。
でも、やっぱりこわがらせるだけで、悪いことはしません。
もしかしたら、「夜に一人で出歩いちゃダメだよ」というメッセージなのかもしれませんね。
豆知識
- 実は「べとべとさん」に似た妖怪が日本各地にいます。「ぬりかべ」「ひとだま」などもその一種と考える人もいます。
- ゲームやアニメにも登場していて、人気キャラとして知られています。
- 声をかけることで消える妖怪は、実はとても珍しい存在なんです!
出現する場所
べとべとさんの目撃談や伝承が多いのは、奈良県の吉野地方や、和歌山県の山間部です。
昔は街灯もなく、夜は真っ暗。そんな中を歩くのはとても不安だったでしょう。
べとべとさんは、そんな夜道で人の後ろをついてくるけれど、声をかければ消えてしまう…
まるで「気をつけて帰りなさい」と見守ってくれているかのようです。
今でも山道や古い町並みで「べとべとさん」の話を聞けることがあります。
「べとべとさん」が教えてくれること

ある日の物語
ある日の夜。細い山道を、小学生の「ゆうた」が一人で歩いていました。
今日はおばあちゃんの家に泊まりに行く日。少し遅くなってしまったけれど、あともう少しで着くはず…。
「ぺた…ぺた…」
ふいに、後ろから足音が聞こえてきました。けれども道にはゆうたしかいません。
ゆうたはこわごわと振り返りますが、そこには誰もいません。
「ぺた…ぺた…」
また、足音。歩けば歩くほど、その音もついてきます。
「だ、誰かいるの?」
返事はありません。ただ足音だけが続きます。
ゆうたは怖くなって、走り出しました。けれど、足音はすぐ後ろに…!
「ぺたぺたぺたぺたっ!」
ついに、涙目になりながら、ゆうたは叫びました。
「べとべとさん、お先にどうぞーっ!」
……ぴたり。
その瞬間、足音は止まりました。風も止まり、空はすっきりと晴れて、星がきらめいていました。
「……あれ?」
何もいなくなった夜道で、ゆうたはぽつんと立ち止まりました。
でも、さっきまでの怖さが嘘みたいに、身体が軽くなったのを感じます。
そのままおばあちゃんの家に着いたゆうたは、おばあちゃんに話しました。
「それはな、べとべとさんやなぁ。ちゃんとあいさつしたから、どっか行ったんやろ。」
おばあちゃんはにこにこしながら言いました。
「べとべとさんはな、悪いもんやない。夜道を見守ってくれとるんや。ただ、あんたみたいにちゃんと声をかけてあげんと、ずっとついてきてしまうんやで。」
ゆうたはその日から、夜道で足音が聞こえたら、こわがるよりもこう言うことにしました。
「べとべとさん、お先にどうぞ!」
伝えたかったこと
見えない恐怖に名前をつけることで安心する
昔の人々は、夜の暗さや見えないものに対する恐怖を「妖怪」という形で表していました。
べとべとさんもその一つです。見えないのに足音だけがついてくるという現象に、名前と性格を与えることで、人びとはその存在を受け入れ、恐怖を少しやわらげていたのです。
「見えないけど、ちゃんと名前がある存在」になると、こわさが少しやわらぎます。
これって、現代の「不安」や「悩み」と似ているところがあります。
何が不安かわからないときほどこわい。でも、「これはこういうことだ」とわかれば、対処しやすくなるのです。
礼儀や言葉の力を信じる気持ち
べとべとさんが消えるきっかけは、「お先にどうぞ」と声をかけることです。
これは、人に道を譲るときの礼儀でもあります。
つまり、「丁寧な言葉」や「相手を思いやる気持ち」が、恐怖をなくしてくれるというメッセージでもあるのです。
昔の人たちは、礼儀やあいさつをとても大切にしていました。
だからこそ、こういう「言葉で解決できる妖怪」が生まれたのかもしれません。
まとめ:べとべとさん 後ろからついてくる 怖いようなカワイイような
- べとべとさんは、姿の見えない妖怪で、足音だけが聞こえます。
- 夜道を歩いていると、うしろから「ぺたぺた」とついてくることがあります。
- 「べとべとさん、お先にどうぞ」と声をかけると、足音が止まります。
- 関西地方、特に奈良や和歌山に伝わる妖怪です。
- 人に悪さはしない、ちょっとおちゃめな性格。
- 見えない恐怖を名前で表すことで安心するという知恵が隠れています。
- 礼儀やあいさつの大切さを教えてくれる存在です。
- 子どもたちが夜に出歩かないようにするための教えでもあります。
- 現代でも「見えない不安」への対処に通じる考え方が学べます。
- こわいだけでなく、ユーモアや優しさのある妖怪です。
おわりに
今回は、見えないけれどたしかに存在を感じる妖怪「べとべとさん」について紹介しました。
夜道を一人で歩くと、うしろから足音がついてくる…
そんな不思議でちょっとこわい体験。
でも、その正体が「べとべとさん」だとわかれば、不安もやわらぎます。
しかも、「お先にどうぞ」と声をかけるだけで消えてしまうなんて、とてもユニークで愛嬌のある妖怪ですよね。
昔の人たちは、目に見えない不安や恐怖に、名前と性格を与えることで、それを受け入れ、乗り越えてきました。
べとべとさんも、そんな知恵の一つです。そしてそれは、現代の私たちにも通じる教えなのかもしれません。