「絡新婦(じょろうぐも)」という名前を聞くと、なんだかおどろおどろしいイメージを持つかもしれません。
でも、実はこの妖怪、ただの怖い存在じゃないんです。
美しい女性に化けて男を誘惑したり、蜘蛛の糸で人をからめ取ったりと、その姿と行動には不思議がいっぱい。
そして
「女郎蜘蛛」ではなく、どうして「絡新婦」と書くのか?
これは日本語の言葉遊びだったんですねー。
今回の記事では、そんな絡新婦の秘密や伝説、不気味だけど魅力的な妖怪「絡新婦」をたっぷり紹介します!
絡新婦(じょろうぐも)とは
特徴
- 美しい女性に化けて人間を誘惑する
- 本当の姿は巨大な蜘蛛
- 糸を操るのが得意で、人間を絡め取る
- 洞窟や廃屋など暗い場所を好む
- 声も甘く、まるで夢のように誘ってくる
- 獲物(人間)を逃さず、じわじわと狩るスタイル
プロフィール
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 絡新婦(じょろうぐも) |
別名 | 女郎蜘蛛、蜘蛛女 |
性別 | 女(に見える) |
出現地 | 主に山奥、洞窟、廃屋など |
得意技 | 蜘蛛の糸、変化の術 |
性格 | 魅惑的でずる賢い |
特徴 | 人間の男を誘惑し、捕らえる |
絡新婦(じょろうぐも)について詳しく

「絡新婦(じょろうぐも)」という表記は、本来の「女郎蜘蛛」の当て字です。
女郎蜘蛛は夏に大きな巣を作っている、黄色と黒の縞々の蜘蛛です。
つまり、音(じょろうぐも)に漢字を当てたものですが、その漢字に意味を込めているのが特徴です。
漢字 | 意味 |
---|---|
絡(から)む | 糸や物が絡まる、絡みつく(蜘蛛の糸を連想) |
新(しん) | 新しい、あるいは「真(しん)」に通じることも(真の姿など) |
婦(ふ) | 女性を表す |
美しさに隠された恐怖
絡新婦は、その名の通り「女郎蜘蛛(じょろうぐも)」が妖怪化した存在です。
ぱっと見は艶やかな女性で、誰もが思わず見とれてしまうほどの美しさを持っています。
でも、その正体はなんと大きな蜘蛛。普段は人間の姿であらわれ、人里離れた場所で旅人などを甘い言葉で誘います。
絡新婦の得意技は、もちろん蜘蛛の糸。この糸は普通の蜘蛛とは比べ物にならないほど丈夫で、しかも自在に操ることができます。
相手が気づかぬうちに周りを糸で囲み、動けなくしてしまいます。そして最後には、ゆっくりと本性を現して…。
どうして人を狙うの?
いくつかの伝説によれば、絡新婦は「人間を恨んでいる蜘蛛の怨霊」だとか、「昔、美しい女性だったけれども、悪いことをして妖怪になった」とも言われています。
だから、人間、とくに男の人に対して怒りをぶつけるように、誘惑して捕らえるのかもしれません。
江戸時代の怪談集や、民話の中にも絡新婦の話はたくさん出てきます。
ある物語では、ある男が美しい女性に会いに行ったら、次の日には行方不明に…なんて話も。
今でも、昔の宿場町や山のふもとには、絡新婦の伝説がひっそり残っていることがあります。
豆知識
・「女郎蜘蛛」という名前の実在する蜘蛛がいる。これは本当に美しい体の色をしている。
・絡新婦は、恋愛や欲望への警告としても描かれていることがある。
・戦国時代の武将が「絡新婦退治」に出かけたという伝説も残っている。
出現する場所
絡新婦は、主に山奥の洞窟や廃屋、人があまり立ち寄らない場所に出没します。
とくに夜や霧が出ているときにあらわれるとされ、気づいた時にはもう糸に巻かれていた、なんて話も。
岐阜県や長野県など、山が多く昔から人が通る街道沿いでは、絡新婦にまつわる話が多く残っています。
絡新婦が教えてくれること

ある日の物語
山の奥にひっそりとある古い廃屋。そこに一人の若者、信(しん)が足を踏み入れた。旅の途中で道に迷い、雨宿りをするためだった。
「ようこそ、旅人さん」
ふいに、家の奥から美しい女性の声が聞こえた。信が驚いて振り返ると、そこには真っ白な着物をまとった女が立っていた。黒髪が長く、肌は雪のように白い。
「あなたのような人を、ずっと待っていたの」
信はドキリとしたが、雨も強くなる一方だったので、女性の勧めに従って家に上がった。出されたお茶を飲むと、急に体がだるくなってくる。
「なぜだ…力が…」
「ふふ、もう逃げられないわ」
その瞬間、女の目が赤く光り、背中から無数の糸がのびて信の体に巻きつく。彼女の姿がだんだんと変わり、巨大な蜘蛛の姿があらわになった。
「これが、わたしの正体。絡新婦よ」
信は最後の力をふりしぼって、持っていた短刀で糸を切り、なんとか脱出。命からがら逃げ延びたのだった。廃屋をふり返ると、すでに姿は消えていた。
それ以来、信は二度と山に近づくことはなかったという…。
伝えたかったこと
人間の欲望と、油断への警告
絡新婦の話は、ただの怖い怪談ではありません。
美しい見た目に騙されてしまうことや、知らない人をすぐに信用してはいけないという教訓が込められています。
また、欲にまかせて行動すれば、思わぬ危険に巻き込まれるという、昔の人の知恵も感じられます。怖い話の中に、大切なメッセージがしっかり隠されているんですね。
まとめ:絡新婦(じょろうぐも)と女郎蜘蛛は違う?当て字のキラキラネームだった
- 絡新婦は美しい女性に化ける妖怪
- 本当の姿は巨大な蜘蛛
- 蜘蛛の糸を自在に操る
- 洞窟や廃屋などに出没する
- 甘い言葉で人間を誘う
- 多くの伝説や昔話に登場
- 人間の欲や油断をテーマにしている
- 実際の女郎蜘蛛も美しい見た目
- 各地に言い伝えが残っている
- 「騙されるな」という教訓も込められている
おわりに
今回紹介した絡新婦は、ただ怖いだけの妖怪ではありませんでしたね。
美しさと恐ろしさをあわせ持ち、人間の心の弱さを見抜いてくる存在。
昔の人は、こうした妖怪の物語を通して、「気をつけなさい」「見た目にだまされないで」といった大切なことを子どもたちに伝えてきたのでしょう。