夜道を歩いていると、ふと足元に何かがすり寄ってくる気配…。
でも、見ても何もいない。

それ「すねこすり」かも!
見た目はふわふわしていてかわいいのに、足元にじゃれてくるせいで歩きづらくなり、つまずいたり転んでしまうこともあるとか。
特に雨の日や暗い夜に出没すると言われています。
この記事では、「すねこすり」とは何者なのか、どこに現れるのか、どんな意味を持つのかを、わかりやすく紹介します。
初めて知る人も、名前だけ聞いたことがある人も、読み終えるころには「なるほど」と納得できるはず。
妖怪 すねこすりとは
特徴
- 夜道で足元にまとわりついてくる、猫のような動きをする妖怪。
- 雨の日や霧の日によく現れるといわれている。
- 姿はふわふわした動物っぽく、可愛らしい見た目だが、悪気なく人を転ばせる。
- 主に岡山県など西日本で語られる妖怪。
- 悪意はないが、注意をそらしてケガをさせてしまうこともある。
- すぐに消えてしまうため、見た人は「気のせいだったのかも」と思ってしまう。
プロフィール
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | すねこすり |
種類 | 妖怪(動物型) |
性格 | いたずら好き・無邪気 |
特徴 | 足元にすり寄ってくる、ふわふわした姿 |
よく現れる場所 | 岡山県を中心とした西日本の夜道 |
出現条件 | 雨の日や霧の日、夜間など視界が悪いとき |
被害 | 転倒・つまずきなどの軽いケガ |
正体 | 小動物の霊・守り神ともいわれている |
「すねこすり」について詳しく

可愛くてちょっと困る?ユニークな妖怪
「すねこすり」は、日本の妖怪の中でも少し変わった存在です。
一般的な妖怪が「怖い」「恐ろしい」といった印象を与えるのに対し、すねこすりは「ちょっと困ったけど、なんだかかわいい」といった親しみやすさがあります。
名前の意味はそのまんま?
その名前は「すね(脛)」と「こすり(こする)」を合わせたもの。
「すねをこすってくるもの」という意味で、まさにその通りの行動をとります。
歩いていると、足元にふわっとすり寄ってきて、びっくりして転んでしまうことも。
まるで猫が足にじゃれついてくるような感覚です。
ふわふわで動物のような姿
すねこすりの姿については、詳細な記録は少ないものの、多くは「ふわふわした毛のある小動物」のように語られています。
猫や小型の犬のような見た目で、愛嬌すら感じさせる存在です。
ただし油断は禁物。無邪気な行動が原因で、人を転ばせてケガをさせることもあるのです。
襲うつもりはない、でもちょっとさびしがり屋?
すねこすりは人を襲うことが目的ではありません。
むしろ、すり寄ってくる行動は「さびしい」「遊びたい」といった気持ちの現れと考えられています。
一説には、昔飼われていた動物の霊が妖怪になったのではないか、という説もあります。
水木しげる先生の作品でも人気キャラに
すねこすりは、有名な妖怪画家・水木しげる先生の作品にも登場します。
そこでは毛玉のようなかわいらしい姿で描かれており、グッズやキャラクター商品にもなるなど、今では小さな人気者となっています。
出現する場所
すねこすりは、特に岡山県でよく知られている妖怪です。
岡山の中でも、山間の道や田舎の細い道、古くからある街道などが舞台になっています。
とくに、街灯の少ない夜道や、雨でぬかるんだ田んぼ道など、足元が見えにくくなるような場所に現れると言われています。
そのほか、中国地方や四国地方の一部でも似たような妖怪の話があり、地方によっては「すねこすり」ではなく、違う名前で呼ばれている場合もあります。共通しているのは、「人の足元にまとわりついて転ばせる」という行動です。
伝えたかったこと
1. 夜道の危険を教える役目
昔の日本は、街灯もなく、雨や霧が出れば真っ暗な道になります。そんな中で転ぶのはよくあることでした。
「夜に歩くとすねこすりに転ばされるよ」という話は、「暗い道をひとりで歩くのは危ないから、早く帰りなさい」という教えだったのかもしれません。
2. 動物との関わり・自然とのつながり
すねこすりは、猫や犬のような動物に似た姿をしています。
足元にすり寄ってくる行動は、ただのいたずらではなく、人のぬくもりを求めているようにも思えます。
昔の人たちは動物との関係をとても大切にしていました。すねこすりは、そうした「動物と人との絆」の象徴なのかもしれません。
3. 目に見えないものへの想像力
すべてを科学で説明しようとする現代と違い、昔の人たちは不思議な出来事を「妖怪の仕業」と考えてきました。
それはただの恐怖ではなく、「想像する力」を育てるためのものでもありました。
すねこすりは、「見えない存在」を意識させる存在として、想像の世界を広げてくれます。
すねこすりが教えてくれること

ある日の物語
ある霧の夜のこと。小さな村のはずれにある細い山道を、一人の少年が歩いていました。
名前はタケル。近くの神社でお祭りがあり、友だちと遅くまで遊んでいた帰り道です。
「しまったなぁ、こんなに遅くなるなんて…。母ちゃんに怒られるかも」
霧がもやもやと立ち込めて、足元もあまり見えません。ふと、何かが「ふにゃ」とすねに触れた気がしました。
「うわっ! な、なんだ?」
思わず立ち止まって、足元をのぞき込むタケル。しかし、そこには何も見えません。ただ、ぬるっとした感触が残っています。
「猫…じゃないよな」
すると、また「すり…すり…」と、足に何かがまとわりついてきます。
タケルは転びそうになりながらも、バランスを取り、あたりを見回しました。
すると、霧の中から、ふわふわとした毛玉のようなものが現れました。
丸くて、ちょこんとした耳。目が合うと、「にゃふ」とでも鳴きそうな顔をしています。
「お、おまえ…もしかして…」
「わしは、すねこすりじゃよ」
ぴょこんと跳ねて、毛玉はしゃべりました。タケルは驚きで固まりましたが、不思議と怖くありませんでした。
「なんで人の足にすりすりしてくるの?」
「さびしいのじゃ。夜になると、だれも遊んでくれんからの。すりすりして、人間のぬくもりを感じたいんじゃ」
すねこすりは、ちょっとしょんぼりした様子で言いました。
「でも、それで転んだら大変だよ!」
「わしは悪気はないんじゃ。ただ、ちょっとさわりたいだけで…」
タケルは少し考えたあと、リュックからおまんじゅうを取り出しました。
「じゃあ、これ。さっきお祭りでもらったやつ。おいしいよ」
すねこすりは目をまんまるくして、「くれるのか?」と聞きました。うれしそうにおまんじゅうをくわえると、「またな」と霧の中へ消えていきました。
それからというもの、タケルが夜道を歩くとき、たまにすねこすりが現れてすりすりしてきます。でも、もう驚きません。彼はおまんじゅうをひとつ持って歩くようになったのです。
不思議な妖怪との、ちょっとあたたかい友情。それが、タケルとすねこすりの物語でした。
まとめ:すねこすり 鬼太郎ではカワイイ犬だっけど本当の正体は…
- すねこすりは、夜道で足元にすり寄ってくる妖怪。
- 見た目はふわふわの動物のようで、ちょっとかわいい。
- 足にまとわりついて転ばせるが、悪意はない。
- 岡山県など西日本を中心に語られる
- 雨の日や霧の日など、視界の悪いときに出現しやすい。
- 「夜道は危ない」という教訓を伝えるための存在とも言われる。
- 名前の由来は「すね(脛)をこする」からきている。
- 水木しげる作品にも登場し、妖怪ファンにも人気がある。
- 目に見えない存在への想像力を育てる役割がある。
- 現代にも通じる教えを持つ、やさしい妖怪のひとつ。
おわりに
「すねこすり」は、ただのいたずら妖怪ではなく、昔の人々の知恵ややさしさが込められた存在です。
暗くて危険な夜道を注意して歩くように、人々に教えるために生まれたとも言われています。
足元に何かがすり寄った時、それを「こわい」と思うのではなく、「すねこすりかもしれない」と想像することで、世界の見え方が少し変わるかもしれません。
この妖怪の存在には、現代にも通じる教えがあります。見えないものを想像する心、人の気持ちに気づくやさしさ、そして危険を避ける注意力。
すねこすりは、私たちにそれらをそっと教えてくれているのです。