夜の海をのぞいてみたことはありますか?
月明かりが水面にゆれて、静かなはずなのになぜか少しこわく感じる。
そんな夜の海には、「海坊主(うみぼうず)」という不思議な妖怪が出ると言われています。

ぼくも坊主だけど・・
巨大な体につるつるの頭。
突然あらわれて、船をひっくり返すこともあるとか。
まるでお寺のお坊さんみたいな名前ですが、その正体はとてもナゾに包まれています。
この記事では、そんな海坊主の特徴や、どこに出るのか、そして実際に海坊主が登場するストーリーまで紹介していきます!
昔の人がこの妖怪にどんな思いをこめて語りついだのか、そして現代を生きるわたしたちにどんなメッセージをのこしているのかも考えてみましょう。
妖怪 海坊主(うみぼうず)とは
特徴
- 海の上に突然あらわれる巨大な妖怪
- 頭はまるでお坊さんのようにツルツルで大きい
- 船をひっくり返したり、乗組員をおぼれさせたりすることがある
- 正体は見えにくく、上半身しか現れないことが多い
- 夜の海や嵐の前に出ることが多い
- たばこや油を好むという話もある
プロフィール
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 海坊主(うみぼうず) |
出現場所 | 主に海の上(特に夜や嵐の日) |
特徴 | 巨大な体、ツルツルの頭 |
行動 | 船をゆらしたり沈めたりする |
好きなもの | 油やたばこ(伝承による) |
苦手なもの | 言葉や煙でごまかすことができる場合も |
海坊主(うみぼうず)について詳しく

海坊主ってどんな妖怪?
海坊主は、日本各地の海に伝わる妖怪で、特に漁師や船乗りたちにとって恐れられてきました。
彼らの話では、海が静かだったのに突然波が荒れ出し、そこに巨大な黒い影があらわれるといいます。船の上から見えるのは、水面からぬっと出た黒い頭と肩くらい。
まるでお坊さんのような姿ですが、にこやかな表情とはほど遠く、どこか無表情で冷たい感じがするのだとか。
どうやって人間に関わってくる?
海坊主は、とくに夜や嵐の前など、天気が不安定なときに現れると言われています。
船をのぞきこんだり、わざと大きな波を立てて船をゆらし、転覆させることもあります。
そのため、昔の漁師たちは「海坊主に会ったらあわてるな」「話しかけてはいけない」と言い伝えられていました。
でも、なぜそんなことをするのでしょう?
海坊主の目的ははっきりとはわかりませんが、いくつかの地方では「人間が海をあなどったから怒った」とも、「供え物が足りないと怒る」とも言われています。
海坊主と会話できる?
海坊主とは言葉を交わせることもあるという伝承があります。
「たばこをくれ」と言ってくる海坊主に、うまく返事をすると助けてもらえたり、追い払えたりすることもあるとか。
中には、うそをついて海坊主を混乱させ、逃げ切ったという話も残っています。
うそといっても、命を守るための知恵だったんですね。
豆知識
- 海坊主は、日本全国で語られているが、地方によって姿や性格がちがう。
- 北海道では「海の魔物」として、もっと動物っぽい見た目で語られることもある。
- 船に「油」を置いておくと、海坊主がそれを気に入って去っていくという伝説もある。
- 昔の船乗りたちは、海坊主のためにお供えをしてから航海に出ることもあった。
- 海坊主は一度怒らせると、なかなか帰ってくれないと言われている。
出現する場所
よく伝説が残っている地域は以下のようなところです。
- 三陸沖(さんりくおき):東北地方の漁師たちの間で、海坊主の話がよく語られています。突然の高波や霧の深い日に出るとされ、「海が荒れたら海坊主が怒っている」と言われていました。
- 瀬戸内海(せとないかい):船の往来が多いこの地域でも、昔から海坊主の噂があります。霧の日には「出るぞ」と大人たちが子どもに話していたとか。
- 能登半島(のとはんとう):石川県の海岸では、黒い影のようなものが現れて漁師を驚かせた、という伝説がいくつか残っています。
- 九州地方の沿岸部:特に長崎や鹿児島では、「海に手を出してはいけない日」があり、海坊主が現れると言われることがありました。
こうした地域では、海坊主の伝説を通して「海をなめるな」という教えが昔から語られてきたのです。
海坊主が教えてくれること

ある日の物語
ある夏の夜、港町に住む若い漁師「カズマ」は、ひとりで夜釣りに出かけました。
彼は「海坊主なんて、ただの昔話だよ」と笑いながら、小さな漁船をこぎ出していきました。
海はとても静かで、星が水面にうつるほど穏やかでした。
ところが、真夜中になると、急に空が曇り、波がざわつきはじめます。
「ん? 天気予報は晴れのはずだったけどな…」カズマがそうつぶやいたとたん、海の真ん中から、ぬぅっと黒い影が浮かびあがりました。
それは…大きな、ツルツルと光る頭。肩まで水面から出ていて、人間の何倍もある巨大な姿。
カズマは思わず声をのんでしまいました。「う、海坊主…?」
そのとき、どこからか低い声が響いてきます。
「タバコ…持っているか?」
カズマはふるえる手でポケットを探りました。でも、タバコなんて持っていません。とっさに、祖父から聞いた昔話を思い出します。
――海坊主は、油が好き。油をあげれば、助かるかもしれない。
カズマはエンジンの近くにあったランプ用の油のびんを取り出し、そっと海に流しました。
海坊主はしばらく黙ったまま、それを見つめていました。そして、まるで満足したかのように、ゆっくりと海の中にしずんでいったのです。
夜があけて、無事に港へ帰ったカズマは、町の人たちに話しました。「海坊主、本当にいたよ。あれはきっと、海をバカにしたおれに怒って出てきたんだ…」
それからカズマは、海に出る前にかならず手を合わせて感謝するようになりました。海のこわさとありがたさを、身をもって知ったからです。
伝えたかったこと
海のこわさを忘れるなという教え
昔の人たちにとって、海は生活の大切な場所でしたが、同時にとても危険な場所でもありました。
船で出かけても、急に嵐がきたり、大きな波に飲まれてしまうこともありました。
そういった自然のこわさを、子どもから大人までわかりやすく伝えるために、「海坊主」という妖怪が生まれたのではないでしょうか。
たとえば、「油をあげないと怒る」とか「タバコが好き」などの伝説も、ちゃんと準備をして出かけなさい、という教えに聞こえてきます。
自然への敬意を忘れない心
海坊主の話には、「海に出る前に感謝しなさい」「海を甘く見てはいけない」という気持ちがこめられています。
自然はいつも人間の思いどおりになるわけではありません。
だからこそ、自然にたいして敬意を持ち、注意深くつきあっていくことが大切なのです。
昔の人は、そんな気持ちを、ただ「海はこわい」と教えるのではなく、妖怪の姿にして語ることで、わかりやすく伝えていました。
まとめ:海坊主の正体は神か怪物か?三陸沖の海に潜む影の真相
- 海坊主は海に出現する巨大な妖怪
- ツルツルの頭と黒い体が特徴
- 船をひっくり返すことがある
- 油やたばこが好きという伝説もある
- 多くの地方で昔から語られている
- 会話ができることもあるという伝承もある
- 海のこわさを伝えるために生まれた妖怪
- 自然への敬意を忘れないことが大切という教訓がこめられている
- 今でも自然災害と向き合うヒントになる
- 妖怪はただこわい存在ではなく、メッセージを伝える役目もある
おわりに
海坊主は、ただのこわい妖怪ではありません。
大昔から海とともに生きてきた人々が、そのこわさと不思議さを伝えるために生み出した存在です。
巨大な黒い姿、ツルツルと光る頭、船をゆらすおそろしい力――でもその奥には、自然に対する深い敬意と、命を守るための知恵がこめられています。
海坊主を通して学んだのは、「自然をあなどらず、感謝し、注意深くつきあうこと」の大切さです。
あなたも、もし海に行くことがあったら、ちょっと空を見上げて、海坊主のことを思い出してみてください。そうすれば、きっと安全に、そして豊かな気持ちで自然とふれあえるはずです。